レスリングという競技は、道具を使わずに1対1で闘う競技です。ただ最低限、必要なものは、マットとシューズと練習相手。強くなるためには、この3つを大切にしなければなりません。その中でも今回はマットについてお話ししたいと思います。

「ゴールド・キッズ」の練習は、ほぼ毎日あります。しかし毎回同じ場所で練習するわけではありません。小学校の体育館や区民体育館、レスリング部のある大学など、さまざまな場所を借りて練習をさせてもらっています。その理由は、道場を持たないクラブだからです。創設当時から、私はマットを敷ける空間を探し、その都度、お願いをして、練習時間を確保しています。そんなわけで、練習場所を点々と渡り歩くジプシーのようなクラブになったわけです。

レスリング・マットの1面は、運動用マット50枚を正方形に敷き詰め、その上にシートをかぶせて作ります。足をとられてケガをしないためにもマット間には隙間を作らず、シートのシワをきっちり伸ばして整える。道場を持つクラブとは違い、ジプシーの我々は、幼児から高校生、親までが一緒になり、マットを敷き、シートをきれいに拭き、片づけるが当たり前。私は、この「マット敷き」は、とても大事な事だと思っています。

準備、片づけという整理整頓の気持ち、ケガを予防しようという自覚、皆で練習場を作ろうというチームワーク、そして練習をさせてもらうという感謝の気持ちを養うからです。

レスリングの選手は、マットの上でしか勝てません。マットの上で技や体力を向上させ、また人としてのさまざまなことを学び、心身ともに成長するからこそ、本当に強い人間となり、勝てるのです。

マットを敷くたびに、この気持ちを決して忘れないで欲しいと願っています。